「正解がない問題になると、どうしても手が止まう…」
「もっと、発想力を付けたい」
学校の勉強や受験では“正解を出す力”が重視されがちですが、
これからの時代に本当に必要なのは、正解のない課題に向き合い、自分なりの答えを見つける力です。
AI時代を生きる子どもたちに求められるのは、
「考える力」よりももう一歩先の――
“共感しながら、創造的に課題を解決する力”。
この力を育てるカギになるのが、近年教育分野でも注目されている
「デザイン思考(Design Thinking)」です。
デザイン思考は“共感”から始まる
「デザイン」と聞くと、絵やデザイン系の職業を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、デザイン思考とは“見た目を作ること”ではなく、
「人の課題を理解し、よりよい形で解決する」ための思考プロセスのこと。
スタンフォード大学発のこの考え方は、世界中の教育現場や企業で導入されています。
そのプロセスは次の5段階。
① 共感(Empathize):相手の気持ちを理解する
② 定義(Define):課題の本質を見つける
③ 発想(Ideate):自由にアイデアを出す
④ 試作(Prototype):小さく試してみる
⑤ 検証(Test):結果を振り返り、改善する
特に子どもたちにとって大切なのが、最初のステップ――「共感」です。
「どうしてそう思うの?」「どんな気持ちだったの?」
そんな問いかけが、創造的な思考の出発点になります。
共感が生む“発想の芽”
ある日、小学4年生のAくんは、クラスで「教室をもっと楽しくするアイデア」を考える課題に取り組んでいました。
最初は何も思いつかず、「無理」「わかんない」と言っていましたが、
「友達が笑顔になるには、どんなことがあったら嬉しいかな?」と声をかけると、
Aくんの表情が変わりました。
「じゃあ、休み時間にクイズコーナーを作るとか!」
「季節の掲示物を作って、教室に飾るのはどう?」
このように、“誰かのため”という視点を持つことで、
子どもは自然と発想モードに入ります。
デザイン思考は、「自分ごと」で考え、「相手の気持ち」を出発点にする。
だからこそ、単なる発想法ではなく、“思いやりのある創造力”を育てる教育法となります。
家庭でできる「デザイン思考的コミュニケーション」3ステップ
家庭でも、親子の会話を少し変えるだけで、
この“創造的思考”を育てることができます。
STEP1:問題を“否定せずに”共有する
子どもが「できない」「困った」と言ったとき、
つい「なんでできないの?」と聞いてしまうこと、ありませんか?
でもここはグッとこらえて、
「どんなところが難しいと感じた?」と“観察モード”で聴いてみる。
親が“ジャッジする立場”から“探究するパートナー”になることで、
子どもは自分の感情や考えを安心して表現できるようになります。
STEP2:アイデア出しを“評価しない”で楽しむ
親が「それは無理」「もっと現実的に」と言ってしまうと、
子どもの発想は一瞬で止まります。
アイデア出しの時は、“質より量”。
「どんな方法でもいいから、思いついたこと全部言ってみよう!」
と促すのがポイントです。
たとえば「宿題を早く終わらせる方法を考えよう」というテーマで、
「宿題をしながら歌う」「友達とZOOMで一緒にやる」「ごほうびタイマーを使う」など、笑いながら考えられたら、それが最高の学びの時間です。
STEP3:小さく試して、振り返る
出したアイデアは、ぜひ“小さく試す”体験につなげましょう。
たとえば「勉強を楽しむ作戦」を1日やってみて、
「どこがうまくいった?」「どうすればもっとよくなる?」と一緒に振り返る。
この「試す→ふりかえる」サイクルが、子どもの実行力と柔軟性を育てます。
心理学が裏づける“デザイン思考の教育効果”
認知心理学では、デザイン思考のような発想プロセスは
「発散思考(Divergent Thinking)」と「収束思考(Convergent Thinking)」をバランスよく刺激すると言われています。
また、ポジティブ心理学の観点からも、
「誰かの役に立つために考える」行為は、自己効力感(自分はできるという感覚)を高めることが実証されています。
さらに、教育現場では探究学習・STEAM教育の中核としても導入が進んでおり、
“失敗を恐れずに試す”姿勢は、レジリエンス(折れない心)やモチベーションの維持にもつながることが分かっています。
※発散思考:質よりも量を重視してアイデアを自由に出す
※収束思考:たくさんのアイデアから最適な一つの答えを見つけ出す
親が“デザイン思考的”になることが最大の教育
子どもは、親の思考法をまねて育ちます。
もし親自身が「こうでなきゃ」「失敗しちゃいけない」と思い込んでいると、
子どもも同じように“挑戦を避ける思考”を身につけてしまいます。
だからこそ、親が“デザイン思考的”であることが何よりの教育。
「じゃあ、どうしたら楽しくできるかな?」
「もう一回やってみようか」
そんな小さな声かけが、子どもの創造力の土台をつくります。
まとめ:共感から始まる“創造の力”を家庭で育てよう
デザイン思考とは、「正解を出す力」ではなく、
「相手を思いやりながら、よりよい形を一緒に探す力」です。
家庭という日常の中で、親子が「共感→発想→行動→ふりかえり」のサイクルを回すことができれば、
子どもは自然と“創造的に生きる力”を身につけていきます。
正解のない時代だからこそ、
答えを教えるより、一緒に考える親子関係を。
その時間こそが、未来の創造力を育てる大切な一歩となります。
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