「うちの子、優しいんだけど…誤解されやすい」
「気持ちはわかっているのに、行動が伴わない」
そんな“共感のズレ”を感じたことはありませんか?
実はその背景には、
感情的な優しさ=エモーショナル・エンパシーが育っているのに対して、
状況や意図を読み取る=コグニティブ・エンパシーが未発達であるケースが少なくありません。
今の時代に求められる“共感力”は、
単なる「気持ちを察する力」ではなく、
「なぜその人がそう感じるのか?」を論理的に理解する力へと進化しています。
この記事では、
親が家庭でできる実践まで含めた「考える共感力」の育て方を、
教育心理学の視点から解説します。
コグニティブ・エンパシーとは?
共感というと「優しい心」というイメージがありますが、実は2つの種類があります。
① エモーショナル・エンパシー(感情的共感)
気持ちに寄り添う力。
「友達が悲しいと、自分も悲しくなる」
これは乳児期から自然に育ち、
日本の家庭・学校で特に重視されてきた領域です。
② コグニティブ・エンパシー(知的共感)
相手の考え・立場・背景を論理的に理解する力。
「友達はどうして悲しくなったのか?」
「どんな状況で、どんな意図があったのか?」
これは“社会で生きる力”に直結するスキルで、
近年、世界的に重要視されています。
なぜ今、知的共感が必要なのか?
1. トラブル回避能力が劇的に上がる
子ども同士の衝突の多くは「誤解」が原因です。
背景を考えられる子は、
「この子は悪気があったわけじゃないな」
と、自動的に理解が深まるため、衝突が減ります。
2. チーム学習の鍵になる
学校現場では“協働学習”が増えています。
コグニティブ・エンパシーがある子は、
〇 チームの役割理解
〇 相手の説明意図の解釈
〇 意見の違いの整理
が上手く、学習効率が圧倒的に高いです。
3. 多文化・多様化社会で必須
家庭環境、文化、価値観が多様な人と関わる未来において、
「自分と違うから間違っている」
という発想では生き残れません。
だからこそ、
背景まで理解できる“深い共感”が未来の武器になるのです。
実際に起こりがちな「共感のズレ」
ここで、実例を考えてみましょう。
● ケース:お友達に強く注意しすぎたAくん
Aくんは優しい子ですが、
「ルールを守らない子を見るとつい怒ってしまう」
というタイプ。
なぜこうなるかというと、
Aくんは“正しさ”には敏感でも、
“相手がそうした理由”を考える習慣がないためです。
・相手にも事情があったかもしれない
・ミスだったかもしれない
・知らなかっただけかもしれない
こうした“背景への視点”が足りないので、
結果として「強く言いすぎる→相手が傷つく」という構図になります。
Aくんに必要なのは「優しさ」ではなく、
背景を推測する知的共感です。
家庭でできる!知的共感を育てる方法5選
① 「どう思った?」より「どうして?」を聞く
共感の焦点を“感情”ではなく“背景”に移すことが重要。
悪い例:
「どう思ったの?」(感情で終わる)
良い例:
「どうしてそうなったんだと思う?」
「相手の立場に立つと、どんな理由があったかな?」
これだけで子どもの思考は大きく変わります。
② “二人の立場”を両面から説明させる
親が裁判官のように「どちらが悪いか」を決めるのではなく、
子どもが双方の立場を語る練習をします。
例:
「Aくんの理由は?」
「じゃあBくんの理由は?」
ここで重要なのは、
「どちらも“理由”はある」ことを理解させること。
③ ロールプレイで社会性スキルを体験させる
ロールプレイは学校教育でも行われています。
例:
・注意する役/される役
・困っている子/助ける子
・間違いを指摘される子/指摘する子
役を入れ替えることで、
自分とは違う立場の気持ち・考えを肌で理解できます。
④ 絵本や動画で「背景」を読む練習をする
絵本やアニメを観た後に、
「この子はどうして怒ったのかな?」
「どんな状況だった?」
「他にどんな理由が考えられる?」
と質問すると、状況理解の練習になります。
⑤ “なぜ?を3回”深掘りする家庭ワーク
心理学でいう「原因の階層」を理解させる方法です。
例:
友達が怒っていた
-
その理由は?
-
その背景は?
-
さらにその理由は?
感情→行動→原因→価値観
という順で深く理解できるようになります。
コグニティブ・エンパシーが育つとどう変わる?
① トラブルが激減する
誤解・決めつけが減り、
子ども同士のコミュニケーションがスムーズになります。
② 自己肯定感が上がる
他者理解ができる子は、
自然と“自分も理解される経験”が増えます。
③ リーダー性が育つ
相手の意見の背景を汲み取れる子は、
集団の調整役として信頼されます。
④ 思考力が伸びる
“状況を読み解く力”は、
国語の読解力・算数の文章題・理科の論理的思考など、
あらゆる学習に直結します。
親だからできる最大のサポート
知的共感は「教える」よりも「一緒に考える」ことで育ちます。
叱る前に
「どんな理由があったと思う?」
「もし自分がその子の立場なら?」
と、子どもの思考を支援するだけで、
世界の見え方が変わっていきます。
まとめ
コグニティブ・エンパシーは、
“他者理解”だけのスキルではありません。
〇 トラブルを回避する
〇 学習効率が上がる
〇 多様性を受け入れる
〇 論理的思考が身につく
未来を生きる子どもに必要な力となります。
家庭でのちょっとした声かけと、
背景を一緒に考える時間の積み重ねが、
子どもの人間関係力を大きく育てていきます。
関連記事はこちら⇩
