テスト前なのに机に向かわない。
ちょっと注意すると、すぐにイライラ。
「やる気がないのかな?」と思いがちですが、
実はそうではありません。
“気持ちを整える力”がまだ育っていないだけなんです。
この力——心理学では「セルフ・レギュレーション」と呼ばれ、
学習意欲や人間関係の土台になる力です。
自己調整力とは?~「我慢強さ」とはちょっと違う力~
セルフ・レギュレーションとは、
感情や行動、考え方を自分で整え、目的に向かって行動できる力のこと。
つまり、「怒らないように我慢する」ではなく、
「どうすれば落ち着けるか」「次はどうすればいいか」と、自分を立て直す力です。
たとえば、勉強中にミスしてイライラしたとき。
・ノートを投げる子もいれば、
・深呼吸してもう一度やり直す子もいます。
この差こそ、自己調整力の差。
心理学では、自己調整力は「非認知能力(学力以外の人間的スキル)」の中核に位置づけられています。
学力、人間関係、スポーツ、どんな分野でも成果を出す子の共通点が、この力です。
「自己調整力が高い子」と「低い子」の違い
自己調整力が高い子の特徴
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感情の波に流されず、冷静に行動できる
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失敗を振り返って、次にどうすればいいかを考えられる
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「今やること」に集中できる
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自分のペースでコツコツ継続できる
自己調整力が低い子の特徴
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注意がすぐに逸れる
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感情的になりやすく、イライラをぶつけてしまう
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「もう無理」とすぐにあきらめる
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一度失敗すると、立て直しに時間がかかる
スタンフォード大学のウォルター・ミシェルが行った「マシュマロ実験」では、
“我慢できた子どもほど、将来の成績・人間関係・健康状態が良かった”という結果が出ています。
つまり、「感情をコントロールする力」は人生の成功を左右する土台となります。
家庭でできる!自己調整力を育てる3つのステップ
① 「感情の言語化」をサポートする
多くの子どもは、怒りや悲しみなどの感情を“うまく言葉にできない”だけです。
まずは、親が代わりに言葉を添えることがポイント。
「悔しかったんだね」
「うまくいかなくて、悲しかったんだね」
このように気持ちを代弁されると、子どもは「自分の感情を理解してもらえた」と安心します。
そして次第に、「今、自分は怒っている」「少し落ち着きたい」と、自分で感情を認識できるようになります。
感情を“敵”ではなく、“情報”として扱えるようになることが、セルフ・レギュレーションの第一歩です。
② 「小さな計画」を立てる習慣をつくる
自己調整力は、いきなり鍛えられるものではありません。
大切なのは、「できた!」という小さな成功体験を積み重ねること。
「今日は5分だけ集中してみよう」
「1ページだけやってみよう」
このように“すぐにできる小目標”を設定し、それを達成できたら一緒に喜ぶ。
これが、心理学でいう「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」を高める方法です。
また、カレンダーやチェックリストを使って進捗を“見える化”するのも効果的。
「自分は少しずつ進んでいる」と実感できることが、やる気の維持につながります。
③ 「失敗をリセットする儀式」をつくる
失敗したあとに立ち直るスピードこそ、自己調整力の真価。
子どもにとって、落ち込む時間を“切り替えるスイッチ”が必要です。
たとえば、
・深呼吸を3回する
・「まぁいっか」と口に出す
・お気に入りの音楽を聴く
・散歩する
「うまくいかないときは、いったんリセットしてもいい」
そう伝えることで、子どもは感情の波に溺れず、自分で立て直す方法を覚えます。
親が意識したい“見守り方”のコツ
セルフ・レギュレーションを育てるには、親の「待つ力」も欠かせません。
つい口を出したくなる場面こそ、ぐっとこらえて見守ることが大切です。
「どうしてできなかったの?」ではなく、
「次はどうしたらうまくいくと思う?」と聞く。
この“未来志向の質問”が、思考の自己調整を促します。
また、結果だけでなく「工夫のプロセス」に注目してフィードバックをすること。
「最後まであきらめなかったね」
「少しずつ工夫してるのがいいね」
この声かけが、子どもの“自己理解力”を深めていきます。
まとめ〜「頑張れ」より「どうすればできる?」〜
セルフ・レギュレーションとは、
自分の感情・行動・思考のハンドルを自分で握る力です。
この力は、「叱って身につく」ものではありません。
親が“環境と声かけ”で支えることで、少しずつ育っていきます。
「頑張りなさい」よりも、「どうすればできると思う?」
この一言が、子どもの自己調整力を伸ばすスイッチになります。
感情をうまく扱える子は、どんな壁も自分で乗り越えられるようになります。
“自分を整える力”は、これからの時代を生きるすべての子どもに必要な「生きるスキル」です。
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