家で宿題をしていても、
手が止まっているのに、
「分からない」とは言わない。
「ここ、分からない?」と聞くと、
「うん、大丈夫」
でも、実際にやってみると、
最初の問題から手が止まっている。
そんなことはありませんか?
親としては、
「分からないなら聞けばいいのに」
「分からないことを、そのままにしないでほしい」
と思ってしまいますよね。
何度も続くと、
「この子は質問するのが苦手なのかな」
「ちゃんと授業を聞いているのかな」
と心配になることもあると思います。
小1から中3まで、
18年間、子どもたちと関わってきました。
その中で何度も感じたのは、
「分からないこと」と、
「分からないことを質問できること」は
まったく別の力だということです。
子どもの中には、
「こんなことを聞いたら恥ずかしい」
「みんなは分かっているかもしれない」
「先生に聞くタイミングが分からない」
「何が分からないのか、自分でも分からない」
「質問したら、できない子だと思われそう」
そんな気持ちから
分からないことがあっても、
黙ってしまう子がいます。
そして、質問できないまま時間が過ぎると、
分からないところが
少しずつ積み重なっていくこともあります。
だからこそ、
「分からないなら聞きなさい」
と伝えるだけでは、
なかなか質問できるようにならないことがあります。
大切なのは、
「分からないことを聞いても大丈夫」
と思える安心感を育てること。
そして、
「何が分からない?」
と聞くだけではなく、
「どこまでは分かる?」
「最初に困ったのはどこ?」
と、分からないことを一緒に整理することです。
質問することは、
「できないこと」ではありません。
むしろ、
自分の分からないところに気づき、
人に助けを求めるための大切な力です。
今回は、
子どもが「分からない」と質問できない理由と、
「聞いてみよう」と一歩踏み出せるようになるために、
家庭でできる具体的な関わり方について、
教員経験をもとにお伝えします。
「質問できない=分かっていない」ではありません
まず知っておきたいのは、
質問できない子どもが、
必ずしも理解していないわけではないということです。
実際には、
「分からないことはあるけれど、
どこが分からないのか分からない」
ということがあります。
例えば算数なら答えが出せない。
でも、
計算が分からないのか、
問題文の意味が分からないのか、
どの式を使えばいいのか分からないのか、
本人にも整理できていない。
そんな状態です。
このとき、
「分からないなら、どこが分からないか言って」
と言われても、固まってしまいます。
だから、
質問できない姿だけを見て、
「ちゃんと考えていない」
「分からないのに放っている」
と判断するのは、少し早いかもしれません。
子どもが質問できない5つの理由
①「こんなことも分からないの?」と思われるのが怖い
子どもにとって、
「分からない」と言うことは、
自分の苦手なところを、
周りに見せることでもあります。
特に、周りの子がどんどん問題を解いていると、
「自分だけ分かっていない」
と感じてしまうことがあります。
すると、
質問するより黙っていた方が安心
という選択をしてしまいます。
だから家庭でも、
子どもが質問してきたときに、
「そんなことも分からないの?」
と言わないことは、とても大切です。
もし簡単な内容に思えても、
「そこが分からなかったんだね」
と受け止める。
それだけで、
「聞いても大丈夫」
という感覚が育っていきます。
② 先生や親に迷惑をかけたくない
意外と多いのが、
「忙しそうだから聞けない」
という子です。
先生が他の子に教えている。
お母さんが家事をしている。
お父さんが仕事をしている。
そんな姿を見ると、
「今、聞かない方がいいかな」
と遠慮してしまうことがあります。
これは、
相手の状況をよく見ている子ほど、
起こりやすいことでもあります。
だから、
「分からなかったら、いつでも聞いていいよ」
と伝えるだけでなく、
「今は忙しいから、あとで聞こう」
という選択肢も伝えておくとよいです。
質問することは、
相手の時間を奪うことではありません。
必要なときに助けを求めることも、大切な学び方の一つです。
③「何が分からないのか」が分からない
これは、特に小学生にはよくあります。
「分からない」と言っても、
実は、
問題のどこでつまずいているのか、
本人にも分かっていない。
そんな状態です。
例えば、
「この問題、分からない」
と言われたら、
すぐ答えを教えるのではなく、
「問題文は読めた?」
「何を聞かれているかOK?」
「使えそうな数字は見つけられた?」
と、一つずつ確認してみます。
すると、
「問題文は分かる」
「でも、式が分からない」
と、少しずつ整理できることがあります。
質問する力は、
実は、
自分の困っている場所を見つける力
ともつながっています。
④ 質問の仕方が分からない
「分からないことがあったら質問してね」
と言われても、
子どもは、
「どう質問すればいいの?」
と思うことがあります。
「分かりません」
だけでは、
何を説明してほしいのか伝わらない。
だから、
質問の型をいくつか持っておくと、
安心して聞きやすくなります。
例えば、
「ここまでは分かるけど、ここから分かりません」
「もう一度、説明してください」
「この言葉の意味が分かりません」
「どこから考えればいいですか?」
「このやり方で合っていますか?」
こうした言葉を使ってみる。
質問は、生まれつき上手なものではありません。
練習できるスキルです。
⑤ 間違えることを避けたい
質問したら、
自分が間違っていることが分かる。
だから、あえて聞かない。
そんな子もいます。
例えば、
「この答えで合っている?」
と聞くことさえ、
「もし間違っていたら恥ずかしい」
と思ってしまう。
この場合、質問することよりも先に、
「間違えても大丈夫」という感覚
を育てる必要があります。
家庭で、「間違えたね」
で終わらせるのではなく、
「どこで考え方が変わったんだろう?」
「ここまでは合っていたね」
と、過程に目を向ける。
すると、
間違いを隠すのではなく、
「ここが分からない」
と言いやすくなります。
家庭で「質問できる子」を育てる5つの関わり方
①「分からない」を歓迎する
子どもが、
「分からない」と言ってきたら、
まず、
「教えてくれてありがとう」
と受け止めてみてください。
もちろん毎回、
すぐに答えを教える必要はありません。
「どこまで分かった?」
「一緒に見てみようか」
と、分からないことを整理する方向へ持っていきます。
大切なのは、
「分からないと言ったら怒られる」
という経験を増やさないことです。
② 親から「分からない」を見せる
質問することへの抵抗を減らすには、
大人自身が、
「分からない」
と言う姿を見せるのも効果的です。
例えば、
「これ、私も分からないな」
「どうしたらいいか、一緒に考えてみよう」
「知らないから調べてみよう」
そんな姿を見せる。
すると、子どもは、
「分からないことは、恥ずかしいことじゃないんだ」
と感じやすくなります。
③「何が分からない?」ではなく「どこまで分かる?」
これは、ぜひ意識してほしい質問です。
「何が分からない?」と聞くと、
子どもは、
「全部分からない」
となってしまうことがあります。
そんなときは、
「じゃあ、最初から一緒に見よう」
と、分かっているところを探してみます。
「ここは読めた?」
「ここまでは分かる?」
「ここまではできた?」
と聞いていく。
すると、
「ここまでは分かる」
という場所が見えてきます。
分からない場所を探す前に、分かっている場所を見つける。
これだけでも、子どもの安心感は変わります。
④ 質問の「型」を家庭で練習する
例えば、
親子で宿題をしているときに、
「分からない」
と言われたら、
「じゃあ、先生に聞くとしたら、どう聞く?」
と一緒に考えてみます。
「この問題の意味が分かりません」
「ここまではできたけど、次が分かりません」
など、実際の言葉にしてみる。
最初は、親が質問役をして、
子どもが答えるだけでも構いません。
繰り返すうちに、
実際の学校でも、言葉が出やすくなります。
⑤ 質問したこと自体を認める
子どもが、
「先生に聞いてみた」
「分からなかったから、友達に聞いた」
と話してくれたら、
「ちゃんと聞けたんだね」
と認めてあげてください。
大切なのは、
「答えが分かったかどうか」だけではありません。
「分からないときに、自分から助けを求められた」
という行動そのものが、
大切な成長だからです。
「自分で考える」と「人に聞く」は反対ではありません
「すぐ人に聞く子になったら困る」
そう思う方もいるかもしれません。
確かに、何も考えずに、
最初から答えを聞くことには注意が必要です。
でも、
「自分で考えること」と「人に質問すること」は、反対ではありません。
自分で考えて、
「ここまでは分かった」
「ここから先が分からない」と判断する。
そして、必要なところで人に聞く。
これは、
むしろ自立した学び方です。
大人でも、分からないことを調べたり、
人に確認したりしながら仕事を進めます。
子どもも同じです。
「全部自分でできること」だけが、
自立ではありません。
必要なときに、適切に助けを求められることも自立の一つです。
「質問できない子」を変える前に、安心して聞ける環境を
質問できるようになるためには、
子ども自身の勇気だけではなく、
周りの環境も大切です。
質問したら、
「ちゃんと考えた?」と言われる。
間違えると、
「なんで分からないの?」と言われる。
こうした経験が続けば、
「聞かない方がいい」
と思ってしまうのは、
自然なことかもしれません。
もちろん、
何度も同じことを聞く場合には、
別のサポートが必要なこともあります。
でも、まずは、
「聞いても大丈夫」という土台をつくる。
その上で、
「じゃあ、どう質問したら伝わるかな?」
と、質問の仕方を一緒に考えていく。
この順番が大切です。
「分からない」と言えることは、弱さではありません
学習が伸びていく子どもたちに共通していたのは、
いつも一人で問題を解ける子ではありませんでした。
分からないときに、
「分からない」と言える。
そして、もう一度自分の手でやってみる。
そんな姿がありました。
質問することは、
「できないから人に頼ること」
ではありません。
自分の学びを前に進めるために、自分から動くことです。
だから、
「分からないなら聞きなさい」
と何度も言うより、
まず家庭の中で、
「分からないって言っても大丈夫」
という経験を増やす。
「どこまで分かる?」
と、一緒に整理する。
「先生に聞くなら、どう聞こうか?」
と、言葉を一緒に考える。
そうした小さな積み重ねが、
次の一歩につながっていきます。
そしていつか、子ども自身が、
「ここが分かりません」
「もう一度教えてください」
「自分でもう少し考えてみます」
と言えるようになる。
その姿は、
「何でも一人でできるようになった姿」とは、
少し違うかもしれません。
でも、
「自分に必要な助けを、自分で求められるようになった姿」
です。
それは、これから先の学習でも、
人間関係でも、きっと大きな力になります。
関連記事
